10年間モンスターを描き続ける「TOMASON」が語る、図鑑『MONSTER BOOK』を通して伝えたい“続ける”ことの意味

どこかユーモラスで愛らしい独自のモンスターを10年間描き続けるアーティスト「TOMASON」。2020年1月に開催したd365のマーケットイベント「サンロクゴ商店街」では、セレクトショップ「JOURNAL STANDARD」とのコラボブースを展開。お客さんをその場でモンスター化する似顔絵のワークショップは、会場内でも大きな盛り上がりを見せた。そんなTOMASONが、自身のモンスターをまとめた図鑑『MONSTER BOOK』を2020年4月にリリースした。今回は出版を記念して、現在の活動のルーツや図鑑の見どころについて話を訊いた。

【PROFILE】
2011年から独自のモンスターを毎日描き続けるアーティスト「TOMASON」。地元の岐阜や東京を中心にワークショップや個展を開催する。2019年に開始した“オリジナルモンスターのテーマパーク”をコンセプトとしたエキシビション『TOMASON LAND』は、岐阜と東京で形を変えながら巡回した。またアーティスト業と並行して、自身のギャラリー「MAT」にてキュレーターとしても活躍する。2020年4月には、10年間描き続けたモンスターの図鑑を出版した。

―そもそもモンスターを描き始めたきっかけは?

もともと幼少期からモンスターなどのニッチなものが好きでした。ウルトラマンや仮面ライダーなどのテレビ番組を観ていても、ヒーローに感情移入できずに、敵キャラをかっこいいと思って、自然と目で追ってたんです。そのうちに、気づいたら自分で描くようになっていて。もちろんその頃はアーティストになろうなんて考えてないですし、ただ好きだから描いていました。

―モンスターを本格的に描こうと決意した理由は何だったのでしょうか?

高校の部活を引退すると、進路がそれぞれ分かれていくじゃないですか。進学するとか、家業を継ぐとか、海外に行くとか。そのとき僕も考えていて、部活が終わったけど勉強はしたくなくて。じゃあ何をしようかと考えたときに、自分が1番好きなことをしたいと思いました。そして、それまでの自分の人生を振り返ったら、モンスターを何気なく毎日描いていたなと気づいて。そこで “モンスター”というものにきちんと向かい合ったら、自分なりに納得できる進路が見い出せるんじゃないかと思い、モンスターを突き詰めることにしました。

―その後、進学するのですね。

高校は普通の学校だったのですが、当時の先生にモンスターが描きたいと伝えて、一般的な大学に進まずにクリエイティブ系の学校に入りました。ただ、入った大学と相性が悪くて、田舎の学校だったのでモンスターが描けるカリキュラムはなかったんです。ちょっと自分のやりたいこととは違うなと思い、すぐに大学の授業とは切り離して、自分のライフワークとしてモンスターを描き続けました。デザインの授業を受けていても、「俺は絵が描きたいんじゃなくて、モンスターを描くのが楽しいんだな」って改めて自覚しました。そこからTOMASONという名前で活動を始めたんです。

―TOMASONという名前にどんな由来があるのですか?

これもめちゃくちゃ適当で、現代アートの界隈の人からめっちゃ叩かれるんですけど(笑)。当時、この活動を始めようってなったとき、まずは名前を決めようってなりました。モンスターを意識して描き始めたときだったので、自分とアートの接点を探しました。そこで思い出したのが、赤瀬川原平という有名な現代美術家の人が提唱していた『超芸術トマソン』というワードです。それが自分の中にあるアートと関わりのある言葉だったので、それ以来使っています。

―2020年4月に、モンスターを描き始めて10周年を記念した図鑑『MONSTER BOOK』が出版されます。我々からすると10年間同じ題材で描き続けることは想像を超える熱量だと感じますが、そのモチベーションはどこにあるのでしょうか。

10年間という年月を意識したことはなくて、気づいたら10年経っていたという感じです。単純計算で365日×10年で3650体のモンスターを描いたことになるんですけど、1日100体描くこともあるので、たぶん1万体は超えてるんじゃないかな。モンスターを描くことは自分の中の使命感というより、なんとなく1日のルーティンというか、描くのが当たり前という感覚です。

―図鑑はどんな内容になっているのですか?

図鑑には252体のモンスターが収録されていて、全部のモンスターに名前と設定などの説明文があります。設定は現実社会とモンスターの社会がリンクしたり混同したりしています。例えば、あるモンスターはめちゃくちゃ歌が上手くて、いい歌声を持っているので昔はホイットニーヒューストンのバックコーラスとしてステージに出たことがあるとか(笑)。

なんか無茶苦茶なんですけど、最近の社会は規制とかにうるさいので、自分の頭のことだけは制限をかけたくなくて。あれはダメ、これはダメという社会の中で、1回リミッターを外して楽しみながら考えるようにしています。

―説明文を読んでるだけでも面白そうです。

「ほかにも、このモンスターは『ムーンライズ』って名前で、メキシコにいるモンスターで、現地でですごい人気があるという設定です。なんでメキシコか、なんでムーンライズっていう名前かというと、これはリアルに現実とリンクしていて。メキシコにムーンライズっていうブランドがあるんですけど、以前SNSで繋がったことがあって、ムーンライズがこのキャラクターをキャップに使ったことがあるんです。そこで、こちら側も敬意を込めて、じゃあこのモンスターの名前をムーンライズにしようと思いました。なので設定も、メキシコに生息していて人気があるみたいな感じで関係させています」

―特に思い入れのあるモンスターは?

お気に入りのモンスターは『ベストコンディション』です。これは杉並区に住んでいる『マッドゴー』という大魔神に、ベストコンディションという名前を付けられたという設定です。モンスターは名もなきモンスターが多いんですが、大魔神に名前を付けられると魔力がめちゃくちゃ高くなるんですよ。このモンスターは、たまたま運よく名前を付けられたので魔力が格段に高くなって、こいつは強いんです。その強いパワーを悪いことに使うのではなく、飢餓で苦しむモンスターに還元してるいいやつなんです。

―ただのイラスト集ではなく、図鑑として完成させているのが面白いですね。

図鑑には、そんな感じで252体分の説明があります。膨大な数のモンスターの世界のセオリーで説明しているので、人間の価値観で読んでしまうと分からなくなってしまう部分もあると思います。ただ僕はギャラリー(MAT)にいるので、『このページのこれってどういう意味ですか』って気軽に聞きに来てくれれば、ちゃんとお答えします。図鑑としてだけでなく、実際に会いに来てくれるためのコミュニケーションツールとしても機能してくれれば幸いです。

―最後に自身の活動や図鑑を通して伝えたいことを教えてください。

モンスターの数だけ人との出会いや貴重な経験もしてきました。10年という厚みやモンスターを通して得たものを、今回の図鑑ではひとつの集大成としてお見せできるんじゃないかなと思います。自分が言うのもおこがましいですが、10年間で何気ないことを地道にコツコツと続けてきて、1冊の本になりました。継続は力なりと言いますが、どんな小さなことでも続けるのが大事なんだなと実感しました。

TOMASONという人はモンスターを描き続けることを選んだのだと知ってもらい、それなら自分も何か続けたら良いことあるかもな、と思ってくれたら。どんな馬鹿げてると思われることでも、意外と続けてみたら面白いほうに転んだりとか、インターネットやSNSが発達した現代ではあることだと思うので。

モンスターを描き始めたころは図鑑を出版するなんて想像していなかったですし、ましてや10年間描き続けるなんて考えていなかったので、継続していくことの大切さを、なんとなくでいいので感じ取ってもらえたら嬉しいです。

『MONSTER BOOK』(3500円+税)
購入方法:TOMASON SHOP
公式サイト:TOMASON
Instagram:new_tomason
住所:MAT 表参道(東京都渋谷区神宮前5丁目49-5 Rハウス)
※2020年4月現在、新型コロナウイルス対策のため臨時休業中。再開情報についてはTOMASONのインスタグラムよりご確認ください。