究極のアジアンコーヒーを。農園の声を届ける「珈琲焙煎所 旅の音」と、タバコ屋のようなコーヒースタンド「MAMEBACO」

2020年1月12日(日)、13日(月・祝)の二日間にわたって、東京・表参道のBA-TSU ART GALLERYで開催するd365のマーケットイベント「サンロクゴ商店街」。本連載では、このイベントにご参加いただくショップやブランドの魅力を深堀りインタビュー。今回紹介するのは、世界各国のコーヒー農園を自らの足で回り、そこで見つけたコーヒー豆を焙煎、ハンドドリップした一杯を提供する「珈琲焙煎所 旅の音」。特に一押しだというミャンマー産のコーヒーは、芳醇な味わいとフルーティーな香味を含む一方で、軽やかに飲めるストレートさを合わせ持ち、これまでのアジアンコーヒーのイメージを覆す。

コーヒー文化を京都から発信する焙煎所

京都・鴨川の上流は、加茂大橋の地点で西の賀茂川と東の高野川へと分かれる。高野川の少し東にある元田中駅の近く、閑静な住宅街の中に「珈琲焙煎所 旅の音(タビノネ)」は店舗を構える。

入り口には大きな焙煎機が設置されており、そこからほろ苦いコーヒー豆の香りが漂う。店内には、温もりあるインテリアが並び、イートイン用の席で淹れたてのコーヒーを楽しめる。観光地の喧騒から一歩離れ、ほっと一息つける隠れ家カフェとしても魅力的だ。元美術学校の校舎をリノベーションしたという店内は、ところどころに当時の面影を残す。床に目を向ければ、あえてそのままにしたという油絵具の跡に風情を感じる。

「『珈琲焙煎所 旅の音』という店名は、コーヒー生産者の声を聴くという意味合いを込めています。僕らがやりたいことは、コーヒー豆の農家の方から、実際にコーヒーをお飲みいただくお客様まで、1本の軸を通して携わることなんです」

オーナーの北辺さんは、世界各国の農園を訪れてこだわりの豆を仕入れている。様々な産地に足を運び、いろんな豆を試した上でたどり着いたのが、ミャンマーのシャン州ユアンガンにあるDaw Pu Shwe(ドープシュエ)さんの農園で栽培した豆だ。

ドープシュエさんの農園で栽培されるコーヒーチェリーは糖度30を超える。普通のコーヒー豆が糖度10程度であり、スペシャリティコーヒーでも15~20度と言われる。巨峰やメロンの糖度が18程度であることを思えば、まさに“フルーツ”の部類と言って過言ではない。シティーローストで仕上げたコーヒーは、グレープフルーツのような香味と、奥深い甘さを兼ね備える。

「沸騰したお湯を一度ポットに移すなどして、90度くらいの少し温度にしてからドリップすると、苦味を抑えられて香りが引き立ちますよ」と、北辺さんはこっそりコツを教えてくれた。

豆へのこだわり、旅の音ならではの魅力とは

コーヒー店でよく見かける「オリジナルブレンド」は用意されていない。それぞれの豆の個性を最大限活かして焙煎を行うのが、タビノネ流だ。キャラメル感が強いどっしりとした風味なら深く焙煎し、ミャンマー・ドープシュエの豆のようにフルーティーな風味なら、それを飛ばさないよう適度に焼き分ける。こうしたこだわりによって、旅の音でしか飲めない味が作られる。

旅の音が力を入れているアジアンコーヒーは、ほかの生産地を凌ぐほどのブランドはまだ持っていない。一方、ドープシュエさんの農園のように、ほかの産地では飲めない味を作れるところも存在する。しかし、いくら生産者がこだわって送り出したコーヒー豆でも、農協でほかの豆と混ぜられてしまえば、その意味はない。だからこそ生産者と直で繋がり、信頼関係を築いて仕入れることで美味しい豆が手に入るのだ。

そうは言っても、現地のルールを壊してはいけない。農協とも良い関係を築きつつ、農家とフェアトレードを実現する。農協に卸さない分をまとめ買いする上で、旅の音では「1割上乗せでも買うから、味作りは妥協しないで欲しい」という約束をして、良い豆を確保する。そのため、出来が悪い年には仕入れないこともあるそうだ。その際には、来年はもっとこうして欲しい、と農家とコミュニケーションをとるのも忘れない。

タバコのような「豆箱」と、タバコ屋のような「MAMEBACO」

そもそも、北辺さんがコーヒー作りに興味をもったきっかけは、旅行で訪れたタイのコーヒー農園にあったという。そこではインスタントコーヒー用の豆を作っていた農家が、新たに生まれ変わるために試行錯誤しており、「コーヒーチェリーがもっと赤く熟すまで待った方がよい」「舐めてみると甘みが違う」――といったことを学んだ。そこで「コーヒー=豆」という概念が覆り、「コーヒー=果実」という気づきを得る。

コーヒー業界に携わりたいと感じた北辺さんは、知り合いのバイヤーを通じてさらにコーヒー農家とのコネクションを太くしていく。その後、焙煎機などの必要な道具を揃え、会社員をしながら副業としてウェブショップ「焙煎工房 旅の音」をスタートさせた。

「定期販売の最初の一ヶ月を無料にして、“まずは飲んでみて”という感じで販売してみたんです。そうしたら継続してくれる方が多かった。当時は浅煎りが流行っていた時期だったのですが、逆に中炒りのキャラメル感を出したトロっとした焙煎をしていたのが気に入ってもらえたのかもしれません」

旅の音では「MAMEBACO(マメバコ)」という2号店も開いた。京都御苑のすぐ近く、烏丸丸太町交差点の角にある、小さなコーヒースタンドだ。今では見かけることも少なくなった“町のタバコ屋”をイメージした外観で、同じくタバコのパッケージをイメージした小さな箱にコーヒー豆を詰めた「豆箱」を販売している。その場でバリスタに淹れてもらったエスプレッソを飲むのもOK。気に入ったデザインの豆箱パッケージのコーヒー豆を買って帰るもOKだ。

「お客さんにはパッケージから楽しんでもらいたいと思っていて、パッケージに差し込んである紙の裏側には、どんな農家さんがどんな想いで作ったコーヒーなのかが分かるようになっています。ただのタバコ風の箱ってわけではなくて、メッセージカードみたいな存在です」

洒落たタバコ風パッケージに詰まったこだわりの焙煎珈琲――。外見だけでなく、中に詰まった芳醇な味わいと想いも魅力的だ。コーヒー文化の源流から河口までが詰まったホンモノの味。ぜひ「サンロクゴ商店街」に足を運んで、味わっていただきたい。

【マーケットイベント『サンロクゴ商店街』】
日時:2020年1月12日(日)10:00〜20:00
2020年1月13日(月)10:00〜18:00
場所:BA-TSU ART GALLERY(150-0011東京都渋谷区神宮前5-11-5)
入場料:無料(事前登録が必要となります。こちらよりご登録ください。)
主催:株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント