「辞めていないことは、続けていることになる」スキをスキルにして生きるための考え方/手描きアーティスト CHALKBOY

グラフィックアートや音楽パフォーマンスに携わり、豊かなライフスタイルを送るCHALKBOY(チョークボーイ)。カフェのバイトで毎日黒板を描いていたら、どんどん楽しくなってきて気がついたら仕事になっていたーーそんなスキをスキルにする彼ならではの、「スキ」を続ける秘訣を探りたい。

自分の人生だから、挑戦は恐れない

「高校生の頃、授業で『ダイマクション地図』というものに出会いました。これはアメリカのバックミンスター・フラーという人が考えた地図で、ギザギザした形を折りたたむと地球儀になります。東西南北もありません。普段よく目にする地図では北と南半球がびよーんと伸びていて、ロシアとアメリカが広く見える作りになっていますが、これは国土のイメージを偽っていると言える。それはおかしいから正そうというリベラルな考え方で作られたものなんです。僕にとっては、地図のグラフィックがむちゃくちゃ格好よく感じました」

チョークボーイさんは、この地図を毎年作っている手帳にも載せている。尊敬の念とともに、バックミンスター・フラーから受けた影響は大きい。

「彼は本の中で“自分の人生は実験であって、自身をモルモットBである”と言っています。僕はその言葉にすごい衝撃を受けて、自分の人生というのは、自分が実験台だったら何をやっても良いんだなって思ったんです。倫理的にOKで、自分が実験台になれば何をやってもいいやと。そこから考え方が変わりました」

尖ることなく、丸くなりすぎることもなく。リスペクトも受けつつも、等身大でいる。客観的な自己分析を繰り返し、チョークボーイという人物像はそのように作り上げられた。

「どの作品もそうですけれど、“これがチョークボーイだ、ドヤ!”という感じで描いていません。結果的に似たテイストになることはありますが、クライアントの話を聞いて、課題に対して自分ができる一番良い仕事をするように心がけています」

手描きの中に生まれる「人らしさ」

チョークボーイさんには、テクノロジーが進化する世の中で、改めて「人らしさ」の価値を伝えていきたいという想いがある。手描きを生業にする、彼ならではの考えだ。

「技術が発展してどんどん自動化が進んでいく世の中で、改めて自分たちに残された『人間らしい生き方・働き方』ってなんだろうなって。手描きを生業にしていると、そういうことに繊細になります。僕としては『人が描いているか、そうじゃないか』の違いは大事だと思うし、これからも手描きがなくなることはないと思っています」

一時的な流行をカルチャーにまで成熟させるというビジョンを掲げるチョークボーイさん。手描き集団「WHW!」というチームを組んだいま、挑むのはより大きな案件だ。一方で、組織化する上で苦労がなかったわけではない。

「元々はフルタイムじゃなくてもよいし、お金さえしっかりすればよい。そんな感覚でした。ただ、去年会社にするときに、従業員を一気に4~5人フルタイム雇ったので、大丈夫かなと怖さを感じる部分はありましたよ。会社の資金は自己財産なので、資本金があって、それが目減りしていく。減ってるなーとは思うこともありますけれど、会社に貸し付けて戻ってくるというイメージです」

自分とスタッフに投資している感覚――。チョークボーイさんのこの言葉は興味深い。アートに関わる仕事という側面も大きいだろう。

成功するのに一番大事なこととは?

そんな彼に、「スキ」を貫いて生きていくために何が重要なのか聞いた。答えはシンプルだった。

「僕が一番大事だと思うのは、“続けること”です。描くことも音楽の活動も続けてきたから、いまの自分があります。もしかしたら何かを続けることを高尚なことと思っている人もいるかもしれませんが、僕としては辞めていないというだけ。辞めたいタイミングはいっぱいあったけれど、その度に、いま辞めるのはやめようと思っていたら結果的に続いてきた。辞めていないことは、続けていることになるんです」

私たちは、何かに挑戦するときに何がなんでも毎日続けよう、と思ってしまいがちだ。しかし、チョークボーイさんの言うように、ゆとりある気持ちで構えていると心が楽になるし、結果的に長続きするのかもしれない。気張らないのもひとつの選択肢だ。

「例えば、好きなことを根詰めて練習したら、もちろん良いフィードバックとして返ってくると思います。けれど、そこまで頑張っちゃうとつまずいたときにポキっと折れてしまう。楽な姿勢が長続きするコツなんじゃないかと思いますね。続けていた先に新しい職業があったりとか、その人らしいオリジナリティが出てくるはずです」

人の目線は気にするな――。これもチョークボーイさんからのアドバイスである。

「他人の視線を気にしていると、どうしてもスピードが遅くなってしまいます。純粋にやりたいことがあるとき、どう見られたいかという考えは邪魔になるんです。まず他人の目を気にせずにやってみる。それで失敗したら失敗という結果が出るので、何もやらずに結果が分からないより大きなプラスになると思います」

最後に、スキをスキルにしてきた実践者からの言葉を、次の実践者に向けて届けたい。

「ありきたりな表現かもしれませんが、まずはやってみるしかありません。別に職業で自分の好きなことを仕事にしたいというのであれば、この瞬間から名乗ってやってしまえばいい。それで稼げるのか稼げないのかは別です。芸人さんは、9割以上の収入をバイトから得ていても“芸人です”と名乗るはず。そうした心構えが重要なんじゃないかなと思います」