「経年変化を楽しむために」裁断も縫製も染色も、すべてがハンドメイド/BrownBrown 川村達郎

工作が得意な子どもが思春期にファッションに目覚め、アパレルへの道に。紆余曲折がありながら、現在は、裁断から染色、縫製まですべてハンドメイドで作りあげる革小物ブランドとして高い評価を得ているBrownBrown。彼らはどのような日々を過ごしながら製作をしているのか? 現在の仕事内容や働き方を探っていく。

東京と沖縄の2拠点というスタイル

代々木公園にほど近く、渋谷や原宿にも近い参宮橋に拠点を構えたものの、大家さんの都合で3年で退去。それを機に現在の学芸大学(東京都目黒区)に移転するのだが、そのタイミングで相棒の渡邊さんは沖縄へ移住という再スタートが切られた。

「渡邊のことをよく知らない人はビックリするんですけど、彼は出会った頃から沖縄が大好きで、沖縄に住むことが夢だったんです。しかも、参宮橋が破格だったので、同じ条件で物件を探すと都内からどんどん遠くなってしまう。”中途半端な場所に行くくらいなら、僕は沖縄行きます”っていう感じです(笑)」

川村さん自身も沖縄に移住する事も考えたが、最終的には彼が東京に残るという選択をした。そのぶん、コンパクトな物件でもよくなったが、打ち合わせやイベントなどはすべて川村さんが行うことに。

「そういうのは得意なほうなんで、仕方がないですね(笑)。その代わりにweb関係や在庫制作などを渡邊にやってもらっています。製作に関しては、デザインを担当した人が最初から最後まで自分で作るというやり方をしています。パーツの買い付けなど、必要なものも各々が揃える。デザインした人間が作る方がうまくできますから」

加工されていないレザーを使う理由

BrownBrownは、裁断や縫製のみならず染色までも自ら行なっているのも大きな特徴。そのほうが革本来の表情が生まれるという。

「一般的に使われている革は、なめした後に洗浄などをしてから染色して、キレイな状態で出荷される。僕らは染料を入れる前の粗い(傷なども目立つ)革を仕入れて、手染めでやっています。だから、厚さも6ミリとかあってロールだと自立するほど。それを漉(す)きながら使っています。表面に加工がされていないぶん、革本来の表情が残っていて、新品でもいい感じの風合いになるんです。結果的にそのほうが経年変化も楽しめるんですよ。僕は雨の日でもなんでも革製品をガンガン使ってほしいタイプ。なので、お客さんにも、特別なお手入れは必要ないですよと伝えています」

染色作業はもちろん、必要な厚さに揃える漉きの作業までやると相当な手間がかかる。そこで、川村さんの主な一日の流れを聞いた。

「10時には仕事場に来て、11時くらいにメールチェックとか事務的なものを済ませて。そこから、その日にやるべき作業を頭に浮かべ、取り組みます。あとはずっと作業をしている感じですね。お店のオープンは13時なので、それまでにInstagram用の写真を撮ってアップをしたり。閉店は20時ですが、閉店後も作業していることが多いです」

アパレル的感覚が差別化につながった

別注品のオーダーも多く、打ち合わせも頻繁にあるとか。近年、そこでしか買えないモデルを揃えることで特別感を演出するショップは多い。そんなとき、別注に細やかに対応してくれるBrownBrownは重宝される存在でもある。

「すべてを自分たちで作るので、多少の仕様の違いならスピーディに対応できるんです」

春夏・秋冬と、年に2回のコレクションを発表しているBrownBrown。そのペースをきっちり守りながら、しっかりと展示会をおこなっているのはアパレル的でもある。

「僕も渡邊もファッション畑の出身なので、そこは無意識に反映されているかもしれないですね。バイヤーさんからも“革職人さんの展示会とは、置いてあるものが全然違う”と言われます。これまで我流でやってきたので、ヘンな固定概念もなく、本当ならやっちゃいけないこともやっていると思うんです。でも、そこが”こんなのできるんだ!”という驚きや魅力になっていると思います。自分たちも、これまでにないようなものを考えて作っているときが楽しいですから」

毎シーズン、膨大な数の新作が並んでいることに驚かされるが、彼らはそれを楽しみながら作っている。そのことがバイヤーやお客さんに伝わり、着実にファンが増えている要因となっている。
次回は、スキをスキルにして働くヒントを紹介していく。