人気沸騰中の革小物ブランド「BrownBrown」誕生までの道のり/BrownBrown 川村達郎

種類豊富な財布やキーケースといった定番アイテム、さらにはトイレットペーパー・カバーやカップ麺ケースのようなユニークなものも取り揃えることで人気沸騰中のブランド「BrownBrown」。伝統的な革職人にはない独自のセンスは、どのように磨かれたのか? ブランド設立までの生い立ち~認知度が上がるまでの軌跡を追った。

親に反対されながらも、ファッションの道へ

「こう見えて、エリート家庭で育ったんです(笑)。自分は幼少期から生き物が大好きだったので、子どもながら漠然と獣医になろうと思って、獣医学部のある付属中学に行ったんですよ。ところが、高校2年くらいで糸が切れたように勉強が頑張れなくなっちゃって……」

親類縁者に士師業が多い家庭で育った川村さん。一方で、本人は絵を描くことや図工が得意で、表彰もよくされていたという。その後、高校でファッションに目覚め、いわゆる受験勉強には身が入らず、美大や専門学校といった進路を目指すようになった。しかし、親には大反対されたようだ。

「大変でしたけど、どうにか親を説得して桑沢デザイン研究所のファッション科に入ったんです。ミシンで古着をリメイクして、自分で作った服を毎日着ていました。かなり奇抜で、いま見るとダサいんですけど(笑)」

卒業後は自身のブランドを立ち上げるため、1年間アルバイトに精を出した。

「周囲の人に相談すると、みんな”考えが安易だ”って言うんです。当時、古着しか知らなくて、ブランドとかも全然わからなかったですし。なので、まずは服をいっぱい見てみようと、セレクトショップのSHIPSに入社しました」

生産管理の仕事で覚えた、ものづくりのイロハ

販売員として4年間を過ごし、数多くのブランドを見て触った結果、洋服の趣味も変わって洗練されたという。

「居心地も良くて、楽しくて仕方がなかったですね。でも、やっぱり服を作りたいという思いがあった。そこで知り合いのツテを頼って、当時大好きだった『mean』というブランドに、”給料はいらないから何かで使ってくれ”と、熱い思いを語って入れてもらったんです」

『mean』では生産管理を担当。生産管理とは、デザインやパターン以外の業務全般。デザインに合った生地や付属パーツを探してきたり、使う生地の量も計算する。さらには工場との打ち合わせ、納期、予算など、製品が店頭に並ぶまでを管理していく。

「とにかく忙しくて、寝る間もなかったですけど、気づいたらモノづくりのノウハウがすべて身についていました。展示会の対応もやっていたので、バイヤーさんともつながれましたし、今思えばラッキーでした」

30歳までには独立しようと、多忙な日々を過ごしながら自分の服作りも始めていた川村さん。そんな折、SHIPS時代の後輩で仲が良く、退職後はオーストラリアで暮らしていた渡邊さんと再会。ふたりは休日になると集まり、お互い好きな服作りをしながら遊んでいたという。

「あるとき、”これまで作ったリメイク服をサイトで売ってみません?”と渡邊が言ってきて。やってみたらすごい反響があったんです。僕はパソコンやネットに弱いんで、当初はひとりでブランドをやるつもりでしたけど、一緒にやるのもいいかなって。2012年にふたりでブランドを始めることにしたんです」

洋服と革小物の2本柱でブランドをスタート

ブランドを始める1年前より、古着のリメイクと平行して独学でレザー製のカードケースやコインケースを作るようにもなっていたふたり。もともとDIY好きだったこともあり、YouTubeを見るだけでコツが掴めたとか。

「友だちの古着屋に置かせてもらったら評判が良かったので、最初の展示会で洋服とレザークラフトを半々で発表したんです。そしたらレザーの反応が良くて、洋服の反応がイマイチだった(笑)」

当初は事務所を借りることもできず、川村さんは自宅、渡邊さんは埼玉にある実家近くの格安物件で制作。立ち上げから1年後に、古巣のSHIPSから大量のオーダーが入ったことで状況が上向くようになったとか。

「SHIPSと取引をするならと税理士を頼んだら、その人が“参宮橋(東京都渋谷区)にとんでもない物件がありますよ”と教えてくれて。そこは、広い敷地に傾いたトタンの家がポツンと建っていて、なかは完全な廃墟。道路までの道が細すぎて建て替えもできないということで、交渉したら家賃が6万円になったんです。しかも、ぶっ壊さなければ何をしてもいいっていう最高の条件でした」

家のなかには私物も含めさまざまなものが置かれていたとか。それらを処分し、内装をDIYしながら自分たちの制作拠点を作った。その独特な空間もまた、ファッション業界人を中心に話題となったのだ。

「めっちゃ気に入ってたんですけど、3年契約の3年目に追い出されて。それで、学芸大学のこの場所(東京都目黒区)に移転したんです」

現在はビームスとのコラボ商品など、多岐にわたって活躍。女性ファンも増え始めているBrownBrown。革小物ブランドとして高い認知を誇っているが、いつかは服作りをしたいという。

「洋服ってサンプル制作だけでも、お金も時間もすごくかかるんです。レザークラフトなら、最短1日でサンプルを作れる、しかもひとりで。とはいえ、服作りはいつかやりたいと思っています」

次回は、現在の仕事や働き方について紹介していく。