東京アウトドアの前線基地「東京裏山ベース」ができるまで/東京裏山ベース 神野賢二

外遊び系アクティビティの拠点として幅広く活用されている東京・武蔵五日市駅前にある「東京裏山ベース」。マウンテンバイク(以下、MTB)好きが高じて、この地に移住した神野賢二(以下ジンケン)さん。いつしか、MTBのガイドを始めるようになり、その活動はどんどん拡大し、現在にまで至るのだとか。その幅広過ぎる活動の全貌に迫る!

色々な人が集まれる場所を作りたかった

32歳の時に、当時の住まいだった東京・吉祥寺から大自然が広がる東京・あきる野市に引っ越してきたジンケンさん。当初は、知り合いに地域の面白いスポットを教えたいという気持ちから始めたMTBのガイドだったが、友人の「こんな楽しいこと、お金を払ってもやりたい人はいるよ」という一言をきっかけに一念発起。『東京裏山ベース』の前身となる、店舗を持たない裏山ライドTokyoを立ち上げ、ガイドツアーを始めたのだった。

「始めた当初は店舗もないので、武蔵五日市駅前に集合にしてもらっていました。途中からは、看板代わりに中古のオンボロキャンピングカーを買って、駅前の駐車場に停めておいて、そこを集合場所にしたんです」

どれほどのお客さんが来るかわからないまま始めたガイドツアーだったが、意外にもビギナー層や女性への受けが良かったという。

「本気でMTBに乗りたい人は、山梨や長野に行けば、専用のフィールドやツアーの業者さんがいくつもあります。でも、まずは体験的にMTBに乗ってみたいといった方が結構いたんですね。それに一日中MTBでガンガン走るより、この地域の良い所を色々と案内して回ったりすると、お客さんの反応がいいんですよ。自分が大好きで移住したこの地域を遊んで楽しんでもらうお手伝いをする、それこそ僕がやりたいことだったんですよね」

ガイドツアーは徐々に、MTBをツールとした楽しい里山体験へと内容が変わっていった。

「MTBのツアーなのに、途中で自転車を置いて歩いたり、川へ飛び込んでみたり。バーベキューがメインのこともありますし、美味しいお店探しで盛り上がったりというようにシフトしていきました。やっぱり僕の中では、ここは手軽に遊べる裏山なんです。本気で1日中MTBを乗り回すのではなく、アウトドアの敷居を下げて、あくまで楽しく裏山遊びができたらいいなと」

武蔵五日市を拠点にツアーガイドをしているうちに、地域の人やジンケンさん同様に、移住して“スキをスキル”に仕事をしている人との出会いも増えていった。

「面白い人とも知り合うようになるんですよ。例えば、忍者とか(笑)。職業が忍者で、日本文化を忍者という枠組みに当てはめて伝える研修をやったり、子供向けや外国人向けのプログラムをやっている方がいたり、農業で食べていきたいと移り住んで来た人や、ナチュラル素材の化粧品を販売している人、あとは謎の林業青年とか、紙すきでオリジナルの和紙を作っている人なんかもいます」

個性的すぎるメンバーとの出会いを重ねるうちに、一緒に何かできないか、という話が出てきた。それが思わぬ展開をみせる。

「この周辺って、みんなで集まれる場所が少ないんですよ。ファミレスもないですしね。それで、シェアオフィスのようなものがあれば、色んな人が集まれていいねと。そんな頃にちょうど、いま『東京裏山ベース』を構えている物件が空いたんです。終着駅の駅前という絶好の場所でしたが、仲間内のシェアオフィスというよりは、この地域に遊びに来るもっとたくさんの人に向けた何か新しいチャレンジができる、もっと広い意味での『みんなの秘密基地』のようなイメージが僕の中に湧いてきて、すごく可能性を感じました。タイミングとしても勝手に運命めいたものを感じて、今しかない、と思っちゃったんですね。そこですぐに手を挙げて、僕がやることになったんです」

こうして、2016年に『東京裏山ベース』が誕生した。ジンケンさん、37歳の春のことだ。

新しい企画やツアーを考えるのが、何より楽しい

『東京裏山ベース』では、カフェ営業を行いながら、トレイルランニング(以下トレラン)やMTB、ハイキングをする人向けのシャワールームやロッカーもあり、レンタルサイクルを扱ったり、地元のお土産の販売などの物販も行なっている。

ジンケンさん自身は、ツアーガイドとしてMTBの他にもトレランなど外遊びのガイドも行うが、現在の仕事はそれだけに留まらない。行政主導の地元の観光を盛り上げるプロジェクトに参画したり、檜原村観光協会や地元のNPO法人と協力して、観光スポットでもある払沢の滝でレンタサイクル事業を運営するといった活動にも積極的に加わっている。

「本当に色々なご縁で、面白い活動をさせてもらっていますが、僕がいま一番やっていて楽しいことって、新しいガイドツアーや企画を考えている時なんです。もうやりたいことが山ほどあって。最近、形になって面白かったのが、トレランやハイキングの方向けの『武蔵五日市裏山ファイブ』と名付けたコースマップを作ったことです」

裏山ファイブでは、『東京裏山ベース』をスタートして、周辺に広がる武蔵五日市の里山を上り下りしながら、5つの山の頂上をクリアし、スタート地点まで戻ってくるトレイルのコースを設定している。1周は約20㎞。1日で回らずに数回に分けてもいいし、トレランで1日で走りきる人は1周のタイムを計れば、次回走った時に自分の走力が上がったか比較もできる。

「このコースマップを作ったことで、武蔵五日市に1回来て終わりではなくて、自分の走力の目安にもなったり、同じコースを経験した人たちの交流のきっかけになったり、何度も通って四季折々の自然を楽しむきっかけにもなるんです。何よりガイドとして僕がご案内できる人数には限りがありますけれども、このマップがあれば、皆さんそれぞれで最高のトレイルを楽しむことができるんです」

裏山ファイブを走った人同士が、『東京裏山ベース』に集まっては楽しそうに話している。そこにはトレランの人だけでなく、ハイキングやバーベキューをしに来た人、MTBの人、地元の人が混ざることもあるという。

「そうやって、色んな人が分け隔てなく、ぐちゃぐちゃになって楽しんでるのがいいですよね。そういうところから、文化みたいなものって生まれるんじゃないかって思うんです」

子どものような笑顔で「東京の裏山の可能性を発信していきたい」と語るジンケンさんは、新たな文化の芽生えを感じながら今日も思い切り遊んでいる。