コーラを仕事にするために。愛情、経験、知恵が形作る新しいパッション/伊良コーラ コーラ小林

会社勤めとクラフトコーラの製造・販売──そのどちらにも最高のパフォーマンスを発揮することが難しいと判断し、結果、広告代理店を4年で退職、コーラ作りで生計を立てる決意をしたコーラ小林さん。それを実現させたのは、自身のさまざまな経験はもちろん、何よりも365日コーラと対峙できる、コーラへの深い愛情である。

伊良コーラに骨を埋める覚悟で!

ついにクラフトコーラ一本の生活をスタートさせたコーラ小林さんの表情は幸せに満ちあふれている。特に、冬場でもファーマーズマーケットでの売り上げを立てられたことや、オンラインストアでの販売を開始したことは、この先も商売を続けていくうえでの大きな安心材料となり、自信にもつながったようだ。そして、急速にその名が広まった「伊良コーラ」をより多くの人に提供し、笑顔になってもらうべく、コーラ小林さんは“毎日”、工房でコーラ作りに勤しんでいる。

「唯一、大変なことを挙げるとすれば人材でしょうか。この先ずっと伊良コーラを続けていくうえではやはり、製造をサポートしてくれるスタッフが必要ですから。とはいえ、ここで働く以上は伊良コーラに骨を埋めるくらいの覚悟を持ってほしいと思っています。それに店舗で接客するスタッフにも、コーラに対する愛情を求めたいのです。今、店頭で働いているスタッフはもともとお客さんだったのですが、伊良コーラに対する愛情があるので安心して任せられるんです」

3年の歳月をかけて生み出した伊良コーラの味と、コーラを楽しむ人々の笑顔、そしてコーラを片手に幸せな気分を味わえる雰囲気──それらを大切にするがゆえにコーラ小林さんが、この先、ともに働くスタッフに対しても“コーラ愛”を求めるのは当然のことなのかもしれない。

個人的なお金は一切なし! すべてはコーラのために!

お祖父さんが使っていた和漢方の製造工場を利用し、コーラ作りのための工房の改装もクラウドファンディングで資金調達したとはいえ、「伊良コーラ」の起ち上げに際しては相当な金額がかかっているはずだ。製造のための道具類や移動販売車“カワセミ号”の購入費用、さらに現在は原材料の調達や“カワセミ号”を維持するための維持費など、1杯のコーラを楽しんでもらうためには相応のお金が必要になる。しかし、コーラ小林さんは金銭面の苦労を微塵も出さない。そこには彼のライフスタイルも大きく影響しているようだ。

「広告代理店に勤務していた頃から5畳1間のアパートに住んでいるんですよ。家賃は5万円。家賃にお金を払うのがもったいなくて……。モテる部屋ではないですけれど(笑)、インテリアには気を使ってますよ。自分で木材を切って居心地のいい部屋にしたり。『部屋も人間も中身!』なんて思ったりして(笑)」

「伊良コーラ」が軌道に乗り始めたであろう現在も、コーラ小林さんはスタート当時と変わらない、それどころか、よりストイックな生活を送っているようにも聞こえる。しかし、悲壮感は全くない。

「個人的なお金は一切使っていないですね。物欲があまりなくて……というのもコーラが自分自身みたいなものなので。“コーラ小林”という名前もそういう意味。“コーラ=小林”なんです。自分が好きなことをやっているので自分が使うお金は入らない。むしろ、浮いたお金があったら少しでもこの事業に投入して、より大きくなっていくことのほうがうれしいんです」

会社員時代は同年代の男性と同様、普通に物欲はあったという。しかし現在は「コーラの売り上げで機械を導入してより美味しいものを作りたい」とか「洒落た装飾を購入して、お店の雰囲気をよりよくしていきたい」といった考えにシフトしている。それも、人一倍の“コーラ愛”があるからこそだ。

愛情、経験、知恵が、好きをスキルにするカギ

まさに、自分が好きなことで生計を立て、この事業のさらなる拡大を視野に入れているコーラ小林さんは、これから好きなことをスキルにしていこうと考える人たちに向け、自身の経験を踏まえて次のようにアドバイスする。

「多くの方々が言っていることに共通してしまうと思うのですが、トライ&エラーを繰り返していくことや、とにかく行動していくこと。あとは自分のルーツを冷静に振り返ってみることも大きなヒントになると思います。特にトライ&エラーについて補足すると、失敗を経験上の学びに変えればそれは失敗ではなくなるわけです。だからどんなことにでもチャレンジすることが大切だと思います」

世の中には「好きなことを仕事にしない方がいい」とする考えもあるが、これに対してもコーラ小林さんは「全くそうは思わない」という。一方で、他にも大事なことがあるという。

「私が会社員の頃は大好きだった釣りを仕事にするのは難しかったと思うんです。というのも、仕事にしていく上では、3軸が大事だと思っています。 “好きか” 、“得意か”そして“社会に貢献できるか(求められているか)”というベクトルです。釣りはあくまでも“自分が好き”なことだったから。もし仕事にするのであれば“得意”だし、“社会に貢献できる”必要もあると思うんです。そのために大事なのは、好きなことを仕事にするために“知恵を絞る”こと。もちろん、アクションを起こすタイミングだって重要になってくると思いますよ」