「ザ・ノース・フェイス」のコレクションが仕事につながる理由/the Apartment 大橋高歩

不景気と世の中の世知辛さに失望した若者が、飲み屋での会話を機にスタートさせた、吹けば飛ぶような洋服屋。それが今では海外のアパレル関係者が来店し、名だたる企業からコラボレーションの話がくるほどに成長している。その理由と日々の業務内容について探っていく。

欧米を中心としたアパレル関係者が来店する理由

現在、「the Apartment」の並びに、雑貨を中心とした「the Apartment SOHO」を構える大橋さん。さらに、お店の近くに広めのスペースを借り、今後はその場所を倉庫およびコレクションのショールーム(非公開)、さらには打ち合わせスペースとして活用していくという。今回話を訊いたのは、まだ片付けが終わっていない新しいコレクションルームだった。

「2011年頃からInstagramを始めたんですけど、海外、とくに欧米からの反応がやけに良かったんです。そこから外国人のお客さんが来るようになって、最初に来てくれたのがイギリスのスニーカーショップ。神戸のアシックスに商談があったついでに寄ってくれたんです。海外のアパレル関係者と交流してわかったのは、まだ再評価がされていない90年代のブランドをタイミングよく提案したり、背後にあるカルチャーとリンクさせて打ち出しているお店は世界的に少ないということ。それが噂になって、いろいろな人が来店してくれるようになったんです」

彼らは”東京に面白いお店がある”という噂を聞きつけ足を運ぶ。大橋さんとのトークは、情報収集の一環なのだ。そういうお店は各都市にあるが、「the Apartment」が東京において足を運ぶ価値のあるショップとなっていることは間違いない。また、近年はオリジナルブランドも好調なため、国内外問わずコラボレーションの話も大量にやってくる。

「ありがたいことに幅広い業種の方から、お声がけいただいています。現在進行形でまだ言えないものも2~3社あります」

毎日いろいろな人に会いに行き、見聞を広めている

そんな大橋さんの主な1日は、朝6時に起床してジムで一汗かいた後、9時に子どもを保育園に送り届ける。その後朝食をとって10時に店舗へ出向き、打ち合わせをしてデスクワーク。ランチやランチミーティングの後は、夕方まで接客などお店の業務をおこない、18時頃からは人と会って飲みながら打ち合わせをすることが多いとか。

 

「とにかく最近は人とよく会っています。というのも、洋服以外もさまざまな企業からお話をいただくので、その道に精通した人にいろいろと話を聞いてノウハウを得ています。あとは、役所や商工会、大学の教授などと一緒に、吉祥寺の街づくりについて話し合ったりもしています」

オープン当初に比べれば、格段に幅広いネットワークができた現在。しかも、インターネットを経由すれば気軽に打ち合わせができる時代。それでもニューヨークへは頻繁に足を運んでいるという。

「もちろん、オープン時の手探り状態だった頃から比べると、食事に行くニューヨークの仲間もできましたし、やり取りはスムーズになっています。でも、現地の空気感を肌で感じることはとても大事なんです。インターネットでその感覚を得ることは絶対にできない。それと、オープン当時から大切にしてきた、”直接買い付け”というスタンスを貫きたいというのもあります」

スポーツショップにあるシンプルなTシャツや、作業着屋さんで売っているマイナーブランドの商品など、NYへ定期的に行くことで次なる商材を見つけることは未だに多いとか。そんななかで生まれた最近のヒットは、日本のアウトドアブランドであるモンベルのヴィンテージだ。

 

「NYに、ラルフローレンとザ・ノース・フェイスを集めているすごいコレクターがいるんです。彼は普段某ブランドで働いているので、仕事中はそこの服を着ているんですけど、休日に会うとモンベルを着ているんです。日本だとわからないですが、海外でモンベルを着ている人を見るとまた違った角度で見える。それで、2~3年前からじわじわ集め始めながら、機が熟すのを待っていたんです。コロンビアもそんな感じですね。でも、先ほどもお話ししましたが、”打ち出しの早さ”が大事なのではなく、カルチャー的なバックグラウンドを含めた”打ち出しの仕方”だと思うんです。背景があることで太鼓判が押され、他店が追随し、最終的にトレンドとして消費されていくんです」

もはやトレンドの仕掛け人としても知られる存在となった大橋さん。次回は、その詳しい話と、スキをスキルにして稼いでいくヒントを訊いていく。