「10人中9人に止められた」それでも挑戦を続ける思考法/CielBleu. 茨木一綺・美伽 

「スキをスキルに。」といっても、言うは易く行うは難し。会社員歴が長くなるほど、それを実行するのは難しくなる。ここでは、シエルブルーのおふたりに、スキをスキルにして生きていくためのヒントやテクニックを訊いた。

子どもに残せる楽しいことを見つけたい

第1回で紹介したシエルブルーの年表を改めて見てみると、これまでにさまざまな職業を経験しており、根っからの自営業気質であることがわかる。しかし、会社勤めをしている人にとっては、今までの職歴を捨てて次の一歩を踏み出すことには勇気がいるだろう。

「僕の仲間にも、自営業に憧れながら踏み切れない人が山ほどいます。安定を求める気持ちはわかりますけど、僕らはそれよりも、みんなに喜んでもらいたいという想いを優先するタイプ。そして、限界を自分で決めない。アウトドアテーブルを始めるときも、バンライフビルダーを始めるときも、10人中9人にやめろって言われました。”そんなの売れるわけねぇじゃん!”“今やっていることを続けていればいいんだよ”って。でも、僕は”やってみなきゃわからない”と思うタイプなんです」(ワカさん)

多くの人に反対されながらも踏み出す勇気。それはどこからくるのだろうか。

「うちも子どもが3人いるので不安な気持ちはわかるんです。でも、周囲を見てみると”子どものためにチャレンジします”という人と、”子どもがいるからやめます”というふたつのタイプがいる。うちは、”子どもに残せる楽しいこと、子どもが胸を張って親はこんなことをしてる、してた、って言えることを見つけたい”と考えるクレイジーな夫婦なんです(笑)。”子どもが成人したら”という方もいますが、その頃には体力もなくなって重い腰が上がらなくなっていると思うんです」(アネゴさん)

「期限を決めちゃえばいんですよ。そこから逆算するほうがラクだと思います。”5年後にはこうなっている”と決めれば、今日やることが決まってきますから。あと、やりたいことがあるなら周囲にバンバン言ったほうがいい。せめて、奥さんや彼女、親友にだけは言ったほうがいいです」(ワカさん)

SNS時代でも、飲みニケーションが大事

若い頃に勢いで行ったアメリカも、帰国してビンテージショップやセレクトショップを始めたときも、すべて大きな賭けだったと語るワカさん。だが、結婚して子どももいたことを考えると、シエルブルーを確立させるために倉敷から埼玉へ移住したことは、なかでも大きな出来事だったと予想される。

「当初からブランディングありきのシエルブルーでいこうと考えていました。女性を中心としたお客さんに向けて、一生手放したくないと思えるものを作る。そんな想いを理解してくれる人、伝えてくれるメディア、協力者を作るために、最初の頃は毎日のようにひとりで中目黒へ飲みに行きました。そこには、アパレル業界やアウトドア業界など、おしゃれな人が集まっていると聞いたからです。実際、今もお付き合いのある方々の多くはそこで出会った仲間なんです」(ワカさん)

実は、超がつくほどの人見知りだというふたり。かつてセレクトショップをやっていたときは「いらっしゃいませ」と「ありがとう」しか言えない接客だったとか。その性格を結婚を機に徐々に変え、移住のタイミングで思い切り芸風(キャラ)を変えたのだという。なぜなら、どれだけインターネットが発達しても、直接会って話すことが大事だからだと語る。

「バーチャルとリアルは全然違います。僕らもSNSをやっていますけど、良いことしか書かないですから。飲みの席では、仕事の話だけではなく、学生時代の話からスケベな話、嫌なことやうまくいかなかった話までいろいろ出てくる。そういうなかでお互いをわかりあっていくわけじゃないですか。信頼の深まり方が違います」(ワカさん)

自分で考えて動かないと何も始まらない。スキをスキルにするといっても、自営業として生きていくためにはオールラウンドプレーヤーにならなくてはいけない部分がある。その中には苦手なものがあっても当然。そこは腹を括って乗り切らなくてはいけない。

「自分で動かないと何も始まらないのが自営業。ほとんどの従業員は仕事を与えられる立場ですけど、僕らは考えるのも意思決定も動くのも、すべて自分。そこが一番の違いだと思います。あとは飛び込む勇気」(ワカさん)

「最初は副業が可能なら、イベントに出店するなどして、少しずつ始めるという手段もありますしね」(アネゴ)

90年代の古着ブームの頃はヴィンテージ雑貨屋、裏原宿ブームにはセレクトショップ。シエルブルーを始めてからはキャンプブームが起き、現在はバンライフを融合しつつ歩みを進める同ブランド。その先見性はどこからくるのだろうか。

「それは仲間のおかげです。周りにいろんな分野で鋭い人が多いから、彼らの意見を黙って聞いていれば”なるほど”というものがいつもある。本当に感謝しかない。つまり、お金より大事なのは人なんです」(ワカさん)

最後に、何か新しいことにチャレンジしようとしている人たちに向けてアドバイスを聞いてみた。

「いろいろな流行りがありますけど、絶対に芯がブレないことが大切だと思います。ブレてしまうと信用をなくしてしまうんです。あとは自分から一歩踏み出してみること」(ワカさん)

「私たちもとりあえずやってみて、合うか合わないかを考えながらやってきました。その繰り返しです。ふたりでゴルフを始めたこともありました。あれはどうにも自分たちには合わなかったですけど(笑)」(アネゴさん)