「東京の家賃は払えないと思った」建築建材のリサイクルショップ「リビセン」が新たな実践者へのヒントを送る/ReBuilding Center JAPAN 東野唯史

解体される古い建物から、新しい形で生まれ変われる古材を“レスキュー”して販売する建築建材のリサイクルショップ「ReBuilding Center JAPAN(リビルディングセンタージャパン)」。そんな同店が生まれたのは、人とのつながりやコミュニティがあったからだと代表の東野唯史さんは語ってくれた。

「ReBuilding Center JAPAN」(以下、リビセン)は、長野県諏訪市にお店を構えている。ちょっと行きにくい場所にあるのかなと思うけれど、最寄りの上諏訪駅は特急列車も停まるし、そこから歩いて10分程度と意外にもアクセスは良好。そもそも東野さんは、なぜ諏訪という土地を選んだのだろうか。

「妻と一緒に空間デザインユニット『medicala』として活動していたときに、下諏訪に『マスヤゲストハウス』というゲストハウスを作ったことがきっかけです。諏訪の土地に自分たちが作った好きなお店ができたし、当時住み込みで作業をしていてすごく気持ちよかった。温泉があるとか、夏でも空気が乾燥しているとか。なので、とりあえず諏訪に住むかとなったのが2014年くらいの話ですね」

ちょうどそのタイミングで東京に住むのが嫌だなと思っていたこと、そしてその後も地方の仕事が多く決まっていたので、どこか地方に移住したいと思っていたことも理由のひとつだったのだとか。また仕事内容やお金の側面からも、上諏訪はメリットの多い立地だったという。

「リビセンを始めるってなったときに、最初にどういう店にするかと考えるとビジネスモデル的に東京の家賃は払えないなって思いました。東京は絶対無理だけど、古材を使う文化をもっと日本に広めたいという考えもあった。そこで、地方都市だけど大都市圏にアクセスしやすくて、さらに公共交通機関だけで来られる場所でやりたかった。また、自動車を持っていない若い世代の人でも気軽に来られるような古材屋さんがやりたかったです。そういった意味でも、諏訪は東京や名古屋から2時間半くらいで来られるのでとても良い立地でした」

自分たちが手掛けたゲストハウスから生まれたコミュニティや地域の人とのつながり、諏訪に拠点を置いてからも広がりをみせている。リビセンの徒歩圏内にも、続々と新しいお店が作られているそうだ。

「最近はリビセンの周りに移住者の人が始めたお店が増えてきて、上手くいけば今月に雑貨屋とカフェを併設したお店がリビセンから歩いて3分くらいのところに完成します。そこから1分くらい歩いたところに、現在リビセンのカフェで働いてくれている男の子が始めるロースタリーとお茶を出すお店が一軒できます。

あとは東京の料理家、大塩あゆ美ちゃんが諏訪に移住してきて『あゆみ食堂』を始めます。1年間で3軒ほど新しい移住者のお店が徒歩圏内にできるので、エリアとしても面白くなっていく兆しが見えています。近所に面白い店が増えて、自分たちの暮らしも楽しくなるのはうれしいことです」

東野さんのような生き方を実践するためのヒント

もし自分の好きなことで生きていきたい、何かを作ったり、お店を出したりしたいと思ったときに、土地代や家賃が安い地方は有力な選択肢に入るだろう。しかしそうした地方でのコミュニティに自分が馴染めるか不安になってしまうのも事実だ。そんな人に向けて、数々の土地で仕事をしてきた実践者としてアドバイスをいただいた。

「まずは、いいゲストハウスがあれば行ってみる。もしなければ、カフェなどのお店が1つくらいはあるはずなので、そこに通っていれば地元の人と知り合えると思います。あとは積極的に地元のイベントに顔を出してみるとか、ちょっと勇気を出してお店の人に話しかけてみるとか。僕の場合、商店街の組合に行ったら若いってだけで喜んでもらえました(笑)」

事業を起こすとなると、場所を選ぶ以外にもお金や時間をどれくらい投資したのかも気になるところ。しかしご存知の方も多いように、現代ではクラウドファンディングのサービスも整っているし、インターネットをうまく活用することでスタートを切りやすい環境になっている。

「リビセンの場合、お金は自己資金200万円を用意して株式会社を立ち上げて、クラウドファンディングで約540万円の支援をいただいて、事業融資で銀行から600万円借りたので、トータルで1300万円くらいです。

これって事業規模のわりにめちゃくちゃ安いんです。安かった理由は、デザインや大工、左官工事を自分で用意したことや、手伝っていただけるサポーターズの方を集めたこと、自分たちの手元にある古材を使って材料を安く抑えたことです。

だけど、いきなり数百人の方にお手伝いをお願いするのは不可能だと思います。『medicala』やそれより前の活動が繋がっていたり、インスタやFacebookなどのSNSをちょこちょこ更新することで、ここぞというときにイイねが1000件くらいつくような発信力を育てていました」

仕事と遊びの境界があいまいになりつつある現代において、自分の人生の中で「好きなこと」にできるだけ接しながら生きていきたい、仕事にしていきたいと思っている人たちもいるだろう。すでに自分のスキルを活かして実現したいことを生業としている東野さんのヒントは、あるエピソードに基づいたものだった。

「僕がサラリーマンだったとき、たまたま友人から仕事をもらったんですよ。そしたら当時の会社の先輩に、『友達の仕事はやめとけ』って言われて。それに対して、なかなか意味深いなって思ったので今でも記憶に残っています。

たしかに一理あって、その時の自分の仕事に自信を持ててないと、結局その仕事をミスったときに友人関係が崩れちゃうリスクが付きまとう。ただ仕事上だけの人と仕事をするのって、なんて気がラクなんだっているのも分かります。

組織のほうが向いている人もいるし、組織にいるからって好きなことを仕事にできないわけでもありません。好きなことを仕事にするって、絶対に友人の仕事をすることがあるんです。だからその覚悟が本当にあるか、いま一度問い直したほうがいいと思います。

だけど、僕は正直自信がなくてもいいとも思っています。ただ胸を張って全力を出し切りましたって言えるかどうかは重要です。組織にいると言い訳はしやすいけど、自分のせいだって思えるかどうかの覚悟。それがあれば大丈夫です(笑)」

人とのつながりが、自分のやりたいことを後押ししてくれる

こうして東野さんの話を伺っていると、「人とのつながり」が次の可能性を広げていることに気がついた。もちろんこれまで培ってきた関係性もあるし、自分の足を動かしたことで生まれたコミュニティもある。自分で何かを始めようとしたときに、一度親しい友人や知人に相談してみるといいかも知れない。話をしていく中で自分のやりたいことが明確になっていくだけでなく、偶然のつながりから一気に道が拓ける可能性があるからだ。